真っ白に染まっていた視界が開けると共に都会の喧騒が耳に響いてきた。見覚えのある町並み。古都に俺は戻ってきたらしかった。
「はあーっ…俺、少しは役にたったのかなあ…」
ぐっと背伸びをしているうちに周りに人がどんどん転送されてくる。どうやら同時進行していた別のGvも次々と決着がつき、冒険者たちが帰ってきているようだった。街に戻る時は全員場所が決まっているみたいで、普段はそんなに混まない広場から少し西に入った大通りは装備を抱えた人でごった返していた。
俺は知った顔を探してキョロキョロとあたりを見回していたが何せ冒険者の数が尋常じゃない。これじゃ流石の戦士も俺を見つけられないだろうなと思い、とりあえず広場に向かって人ごみを抜けた。
「戦士のやつどこに…あれ」
耳にはめている無線チャットで直接声をかけようといじくり回していたら、探していた蒼い髪を見つけた。が、しかし。
「あー…」
戦士はうんざりした顔で目の前に立っている男の相手をしていた。さっきGv中に散々戦士の尻を(語弊があるなー)追いかけていた、ディーカとかいう大男だ。伸されていたけどすぐに復活したらしい。
話しかけるべきか、それとも面倒そうなので先にGHに行くか悩んでいると俺は後ろから肩を叩かれた。
「なあお前」
「へ?」
素直に振り返ると鎧に身を包んだ男が話しかけてきた。しっかりした装備を纏っているので、この男もGv帰りなのだろうか。知らない相手だし、なぜ話しかけられたのかわからない。けれどなぜか見覚えがあるような…
「お前さっきはよくも俺を潰してくれたな?」
「…あ」
そうか。相手の腰の剣と盾でピンときた俺はついさっきのことであるのにすっかり忘れていたことを思い出した。
「あー!さっき俺が倒しちゃった剣士の人?」
「そうだよ剣士のヒトだよ、まっさかレベル差がこんなにある奴に倒されるとは思わなかったぜ…」
まあ普通そうだわな。俺だって戦士の不意打ちがなきゃ間違いなくやられてただろうし。
剣士は頭に巻いていたバンダナを取った。
「あ…」
赤い髪が風にさらりと流れる。全体的に真っ赤な、ポーションのような色をした髪は毛先に向かって夕日のようなオレンジ色をしていた。そのグラデーションが綺麗で俺は思わず動きを目で追ってしまう。
「ン?あんだよ。…ああ、俺の髪が珍しいのか?」
「あ、ああ。いや…おもしろ…綺麗な色だと思って」
「お前変な奴だな…ま、一応褒め言葉として受け取っといてやるぜ?サンキュー」
ニカッと白い歯を見せて笑う剣士。ちゃんと顔を見ると目の色も赤みがかかっていた。というか、普通に喋ってると威圧的なオーラさえ感じるのに笑うとけっこう子供っぽい。俺と年齢があまり変わらないのかも。
なにやらきな臭い展開に。
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