「収穫はあったな。助っ人するのも悪くないぜ。お前名前は?」
「リュウ、だ」
「天竜のリュウな。お前のことは覚えておくぜ、面白いし。俺はウォルフってんだ」
軽い自己紹介をして握手。昨日の敵は今日の友とはよく言ったものだけど、案外間違ってない。このウォルフって男は自分の半分のレベルにも満たない相手に倒された割には根に持ってないようで、俺に向かってまたさっきの子供っぽい笑顔を向けていた。
「今日はホークが天竜とやりあうって言うんで一時的に参加してたんだ」
「へー?じゃあ普段はギルド入ってないんだ?」
「んにゃ。普段はちゃんと決めたトコにいるぜ?結構有名な…あ、」
ウォルフが俺の後ろを見て口を閉じた。振り返ると戦士がこっちに向かって歩いてくる。ディーカは地面に突っ伏していた。周りには惨劇のように血が飛び散っていて何事かと通行人が覗き込んでいる。どうやら戦士が拳でまた沈めたらしかった。
「あー、戦士やっと話終わったみたいだな」
「……あれか、天竜の最終兵器は」
「え?」
不意に低くなった声は一瞬誰のものかと思うほど。ウォルフを振り替え見ると視線に気づいた相手がまたニカッと歯を見せて笑いかけてくる。
「あーやべ、気づかれた。じゃーなリュウ!またそのうち会おうぜ!」
「え、あ、ウォルフ?おい、連絡先くらい教えてくれても……行っちまった」
あっという間に人ごみに紛れて見えなくなってしまった赤髪を探すのは早々に諦めた。あー、と思っていると突然真横を蒼い風が吹きぬけて。
「………ちっ」
俺の前に出た戦士がウォルフの消えていった方向を向いて舌打ちしていた。
「戦士?なんだよ知り合いだったのか?」
「…いや、知らない相手だ」
なにやら裏のありそうな言い方だったが、戦士くらい有名で強い奴ならそこかしこに因縁くらい転がってるもんなんだろうと納得した。ディーカみたいに勝手にケンカふっかけてくるやつが他に居たっておかしくないんだし。ウォルフもそういう中の一人なんだと思った。
「ディーカに構っていたらすっかり遅くなった…リュウ、さっさとGHに行こう」
「おう」
横に並んだ戦士と広場に向かって歩いていく。きっとホールに着いたらコノハたちから「遅い!」って言われるんだろうな、と何気なしに考えた。
なにかあるようです。
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