『421.377だ』
ギルドチャットから聞こえてきた言葉になんのことだと思う間もなく、周りのギルメンたちが一斉に走りだした。
「行くぞ」
「え?」
「相手ギルドの居場所だ。もう交戦中だろう、援護に向かう」
さっきのは敵の座標ということか。状況を飲み込めた俺が頷くのを確認してから戦士は走り出した。俺もそれを追う。
指示された座標は降り立ったところからそう遠くない。近づくにつれて剣の交わる金属音や爆発音が聞こえてきた。崩れかけた岩山を越えて地面に降り立つと目の前には。
「うわー…」
数多の冒険者たちが入り乱れて交戦している。すでに地面へ突っ伏して気絶している者も少なくなかった。
空からは氷と炎の矢が雨となって降り注ぎ、地面では八方から槍や剣、さらには爆弾が飛んでくる。それらをすり抜けても魔法や呪いといった物理以外の攻撃も対処しなければならない。
冒険者同士の戦闘は普段のフィールドでは禁止されているため見たことが無い。モンスターではない相手との戦いがこんなに…狂瀾怒涛だとは。
「ひとりでいると狙われる。こっちだ」
降り注ぐ火の玉を避けて戦士が仲間の後ろを指差した。
前線で刃を受け止めているサマナーのペットや神獣達の後ろに回りこみ、隙を見計らって相手ギルドの身体にダートを放つ。レベルの低い俺の攻撃で致命傷になることはないだろうが、動きを鈍らせて攻撃特化したギルメンのサポートくらいにはなるだろう。
「いい動きね、リュウ」
コトハが敵の剣士を弓で殴り飛ばしながら笑った。
「レオは?」
「あそこ」
俺が指差したところでは10人がかりで突っ込んできた敵を竜巻で難なくふっ飛ばしている戦士の姿があった。
「相変わらずいつもどおりね」
ふう、と呆れたようにため息を吐いたコトハがなんだかおかしくて笑った。
――そのとき。
「見つけたぞレオー!」
リハビリせねば。
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