「…は、うぇ?」
目の利くようになった世界で、キョウが間抜けな声をあげた。
俺と俺の足元に倒れている男を交互にみている。
無線機からは346点、というゲーム進行の声が聞こえてきた。
「うえええっリューちゃん倒しちゃった…!?」
「あー…みたい」
「うそっリュウ160前後じゃなかった!?」
「…154」
「倍以上!?」
盛り上がるコトハたちとは逆に俺はどこか冷静だった。
これが俺ひとりの力ではないことを知っているから。
少し離れた地面に転がっている見覚えのある鞘をみているとむず痒いような、恥ずかしいような照れくさいような気持ちになる。
後ろでゴキッという鈍い音を立てたおそらく元凶である男のせいで。
「…しつこい」
戦士はアッパーカットを決めたらしい。ディーカは地面で目を回してのびていた。
『ミディクスホーク、全滅。よって天竜八部衆の勝利とする』
ゲームの終了を告げる声。そのあとはこちらとあちらの点数をループで流し続けている。
「全滅勝ちは久しぶりだね」
敵の死屍累々となった山の向こうからルシィが手を振っているのが見えた。
「キョーウー!わたし今夜は用事があるからこのあと付き合えない!ごめんねー」
「ハイヨーお疲れさま。また顔出してよ」
「うん!リュウ君今日はおつかれさま、お手柄だったね!今度時間があるときにゆっくり話そう?バイバイ!」
こちらが返事を返す間もあたえず一通り喋ってからルシィは消えた。
それを皮切りにしたように味方も気絶していた敵も消えだした。
Gvの決着によって、もう街へ帰れるようになったのだろう。
「とりあえず帰ろっか。おつかれみんな、先帰ってるよ」
「リュウまたあとでね」
「GHで待ってるぞ」
そう言い残して3人は消えた。
俺が3人のいなくなった場所を見つめたまま突っ立っていると、背後でがしゃりと防具のぶつかる音がした。
「リュウ」
振り向かずともわかる。戦士だろう。
「鞘、戦士のだろ」
「…気づいていたのか」
鞘を拾い上げて戦士と向き合う。憎らしいほど逞しい胸にそれを突きつけるようにして差し出した。
「こういうことをするとお前は怒るだろうとおもった。でも…」
鞘を受け取りようやく剣を納める。
そうしてから、戦士は俺を真っ直ぐ見すえて―――
「お前が他人に傷つけられるのは許せなかった」
――またそういうクサイ台詞を吐く…
俺はどうしたい、どう言えばいい。この気持ちを。
90%の子供扱いするな、俺はそんなに柔じゃないという思いと。
10%の…ああ、きっと俺すごく愛されてる…っていう、心。
1割だけのはずなのにそれは図々しく心を占めていて。おかしい…きっと俺もおかしい。
少しでも…"嬉しい"なんて…
「バカじゃねえ…?」
「ああ、そうだな」
「…でも」
言ってやってもいいかな、なんてどうかしてるんだ。
「一応…ありがと、な」
戦士の破顔した顔は初めて見た。
ツンツンデレ。
デレデレデレ。
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